氏神様は太刀八幡宮

1200年の歴史を紐ときます

太刀八幡宮の絵馬 保存の考察 文化財?

太刀八幡宮の絵馬達の保存を考える上で、この絵馬達に文化財としての価値があるのか気になりました。

 

朝倉市のホームページで、文化財の検索をすると、絵馬の指定は無いようです。

 

先日、太刀八幡宮の絵馬を見て頂いた朝倉市文化生涯学習課のNさんに、絵馬の文化財指定について聞いてみたところ、

 

「絵馬については、非常に関心を持っているところです。」

文化財指定の際は、その絵馬の美術的価値に加え、誰がどういう経緯で奉納されたのか、絵馬に描かれた内容が文化的価値があるのか等、色々評価が必要です。」

とのことでした。

 

色あせていても絵馬奉納の背景によっては、文化財としての価値があると判断することもあるのでしょうね。

 

以前、朝倉図書館で絵馬の資料を調査していた時、

福岡県の絵馬 第一集 北筑後・南筑後教育事務所管内編(平成9年3月)

という資料を読みました。

 

当時(平成9年3月)の福岡県博物館協議会会長であり、福岡県立美術館長の丸林茂夫さんが、「はじめに」として美しい文章を書いていますので、一部引用します。

 

神社に参詣したときなどに絵馬堂に立ち寄るのは今日の私たちにとっても心和む体験です。

ましてや庶民にとって絵画を鑑賞する機会がきわめて限られていたはずの往時にあっては、絵馬鑑賞は今日の想像をはるかに越える喜びと慰みを庶民に提供したことでありましょう。人々の祈りや美意識がこめられた絵馬は村落共同体の精神生活を担う中心的な表象として機能していたに相違ありません。そのことから、絵馬の文化財としての、または美術品としての価値が今日見直されようとしていることはむしろ当然のことといえます。・・・

 

絵馬の価値を簡潔に訴える名文ですね。

 

 

この資料は、福岡県博物館協議会が平成元年度において10周年を迎え、その記念事業として県内の全域の絵馬調査及び報告書刊行したものの一部です。

最終的にこの事業は、平成11年10月に福岡県立美術館で開催された

特別展「絵馬」 神に捧げた祈りの美

へとつながります。

 

「絵馬」神に捧げた祈りの美

福岡県立美術館 カタログ画像より引用

 

朝倉図書館でお借りして見ていますが、良い内容です。

生で絵馬を見てみたいと、欲が出ます。

 

福岡県の絵馬 第一集 北筑後・南筑後教育事務所管内編には、調査した神社の名前、絵馬の画題、制作年、作者、寸法、銘文が記載されています。

 

朝倉郡朝倉町では、11の神社、71点の絵馬が調査されています。

 

ところがその中に、太刀八幡宮は含まれていません。😱

 

え、なんで❓とびっくりしたのですが、報告書の中に調査期間のことに触れている個所があり、原因の一端なのかもしれないと思いましたので一部引用します。

 

筑後教育事務所管内の絵馬について

 

調査期間は平成2・3年度の二箇年間をあてたが、調査最終段階の平成3年9月には、県下は史上稀にみる強烈な台風に見舞われ、特に甘木・朝倉地域は人家や工作物、農作物等が甚大な被害を蒙った。強風による神社の被害も大きく、神社の拝殿や絵馬堂に飾られていた絵馬も暴風雨によって飛ばされる等の被害を受け、中には、調査が済んだ絵馬が所在不明になったり、被害に遭った後は神社に掛けずに倉庫等に収納されたりして思うように調査が進まず苦労した。・・・

 

平成3年といえば、太刀八幡宮も暴風雨の影響を受けています。

 

以前のブログに暴風雨について触れています。

goodlightsato.com

このブログの一部を引用します。

この記念碑によれば、平成3年9月の2回の暴風雨🌀により、古木を含め3百本余りが倒木したとのことです。

 

幸い絵馬達は無事でしたが、この時の絵馬調査からは漏れてしまったようです。

 

平成3年というと約30年前のことになります。

 

この報告書によれば、朝倉市内の絵馬の数は次の通りです。

甘木市 35神社 226

杷木町 26神社 274点

朝倉町 11神社   71点

 計  72神社 571点

これに、太刀八幡宮の絵馬のように調査から漏れた数を足すと、どれだけ膨らむのでしょうか。

あるいは、平成29年(2017)7月九州北部豪雨により、黒川の高木神社では絵馬も相当被害を受けたように聞いています。

 

それにしても、これらの多くの絵馬を再度調査し、まとめ上げようとするのは大変な労力ですね。

私が心配することではありませんが、朝倉市の担当者を応援したくなります。📣

 

参考に、うきは市には市の指定を受けた絵馬がホームページで紹介されています。

www.city.ukiha.fukuoka.jp

 

 

また福間市には多くの絵馬がホームページに紹介されていますが、福間浦鰯漁図は福岡県有形民俗文化財に指定されているとのことです。

 

www.city.fukutsu.lg.jp

 

 

こうして見てみると、太刀八幡宮の絵馬の文化財的価値を見いだすのは、氏子の方々なのでしょうね。市は文化財保護という観点から色々進めていくでしょうが、前回のブログでもいいましたが、顧問の方が絵馬の保存を考えて欲しいとおっしゃるのは、氏子として絵馬の価値を認めているからのことなのでしょう。

 

私も同感です。

 

氏子の一人として、この絵馬という文化財をもっと多くの氏子の皆様に直接見て頂きたいと思っています。太刀八幡宮に足を運び、絵馬に触れ、先人たちの思いを感じ取ることが文化を守ることに繋がり、その上で風化に対してどういう対策をしていくのかを、皆さんで智恵を出し合って考えていければと思います。

 

私も、さらに保存について勉強していきます。