氏神様は太刀八幡宮

1200年の歴史を紐ときます

太刀八幡宮の絵馬 保存の考察 修復

古く色あせた絵馬を見ると、修復してきれいになったら良いなーと思ったりもします。

神功皇后三韓征伐図

今回は、絵馬の修復について考察していきます。

 

佐賀県鹿島市 五の宮神社の大絵馬の例

 

この記事はネット社会だからこその事例でしょうが、太刀八幡宮の絵馬の修復を考える際には非常に参考になる内容です。

 

sakisiru.jp

 

記事の内容を引用しながら、太刀八幡宮の絵馬に例えてみます。

 

 

①太刀八幡宮神功皇后三韓征伐図を修復したいと思った長老がいました。

 

②地元への恩返しを兼ねて、友人の画家に私財を出して修復することを、宮司さん・氏子の方々に相談して了解を得ました。

 

③友人の画家は依頼を受けて、今後長く愛される絵馬にしようと精神誠意修復しました。

 

④修復した絵馬が奉納され地元の人々は喜び、地元のマスコミが取材に来て報道されました。

 

⑤すると、全国から批判の声がネット上に投稿されました。

これは修復ではなく、どこぞのキリスト像のように事故。

これは酷い、完全に別物じゃないか。

修復は修復家にして欲しい。

修復では無く創作では。

 

 

⑥それを聞いて長老は

「お話を聞いてがっくりです。みんなに申し訳ない」

と非常に困惑してしまいました。

 

仮に、太刀八幡宮の絵馬を修復することになった場合、十分起こり得る話です。

よかれと思って行った修復が、外部の人から相当な避難を受ける。

今のネット社会では、あって当たり前と思って良いでしょう。

 

記事の最後にも書かれていますが、

重要なのは「地元の人々は喜んでいる」という点だ。

どういう批判がこようが、氏子の方々が喜ぶのであればそれはなのでしょう。

だからこそ、修復を選択する場合、十分検討する必要がありますよね。

 

先日、太刀八幡宮の絵馬を見て頂いた朝倉市文化生涯学習課のNさんに、この記事の事も話しながら、次の様に聞いてみました。

 

「この神功皇后三韓征伐図は、拝殿正面中央に掲げられているように、太刀八幡宮の代表的な絵馬なので、色あせて見えないよりは、地元の高校の美術部にお願いして修復してもらうというのはどうなんでしょうね。」

それに対してNさんは、

「そういう修復よりは、この絵馬にはこういう内容が書かれているということが分かる複製画を作って。横に飾ったほうが良いのではないか。」

と意見を頂きました。

良い意見だなーと感心しました。

 

石川県金沢市の絵馬修復

 

ユーチューブに石川県文化財保存修復工房が行った、絵馬の修復作業の状況が公開されています。

修復された絵馬は、板に和紙を貼って絵付けしたものですが、絵馬修復の過程が分かりとても参考になります。

これらは、金沢市指定有形民俗文化財に指定されているものです。

 


www.youtube.com

 

福岡県にも同様の文化財修復工房があるのでしょうか?

 

 

NPO熊本文化財プロジェクト

熊本県阿蘇NPO熊本文化財プロジェクトが活動している状況が、インターネットで見ることが出来ます。

ホームページの設立趣旨を見てびっくりしました。

一部引用します。

kumamoto-cpp.com

 

神社は古来より村の拠り所として、大絵馬や天井画・歌仙絵などが奉納され、長きにわたり村人たちに親しまれ、村の求心的存在であると同時に、いわば、村の文化施設としての役割をも担ってきました。

日本全国の神社には、文化財に指定されるべき大絵馬が、何万何千と奉納されています。しかしそれらは、江戸期に描かれたような貴重な作品であっても文化財指定されることなく、その殆んどが、経年変化に加え、昨今の度重なる地震や風水害による剥落が進み、消滅の危機に晒されています。

現在、多くの神社において、農村の過疎化や神社を支える氏子の減少により、これら大絵馬を村の宝として護りたくとも、保存修復の予算確保が難しく、お座なりになっているのが現状です。そのような状況を鑑みて、私たちが会を立ち上げ、共に協力する形が生れれば、この現状を変えられるのではないかと考えました。

この設立趣旨に書かれた言葉を読むと、まるで太刀八幡宮の絵馬達のために設立された団体なのではないかと思ってしまいました。というより、全国で同じ課題に遭遇している神社がたくさんあるということですね。

 

大絵馬修復の写真もホームページに載っています。

kumamoto-cpp.com

 

代表の大塚浩平さんは日本画家であり、日本画工房 浮島館の代表も務めており、そちらのホームページにも絵馬の修復の状況を載せています。

www.ukishimakan.com

 

太刀八幡宮の絵馬達が修復の道を選ぶことになれば、こういう団体に依頼するするのも検討の一つです。

 

福岡県にも同様の組織があっていいですよね。

 

修復して良い物、悪い物

 

極端な例かもしれませんが、文化財と言われる物の中にも、修復してはいけないものもあると思います。

絵馬展のなかで紹介されていた、お馬さんやお猿さんの絵馬を、何を描いているか分かるように修復したら、その文化財としての価値は、失われるように思います。

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特別展「絵馬」 神に捧げた祈りの美 カタログより転載

 

例えば、前回ブログに書いた太刀八幡宮三十六歌仙図はどうでしょうか?

goodlightsato.com

残念ですが、ほとんどが脱落して、残った板絵も何が書いてあるか分かりません。

修復というよりは、いずれ処分されてしまうでしょう。

 

太刀八幡宮の絵馬を、修復するべきか?その場合誰に修復をお願いするか?

簡単に判断出来ない問題です。

🤔